たった2000円の自己負担で、肉から野菜、果物、最新の家電まで、豪華な特産品を返礼品としてもらえることで注目を集めているふるさと納税。年々増え続ける大量の申し込みを、現場の職員たちはどのように処理し、特産品を全国に届けているのか――本誌が向かったのは、全国でも有数の人気を誇る山形県・天童市。そこで見たのは予想を超える膨大な書類とわずか7人の職員たちだった!
市役所の3階にある「ふるさと納税推進係」を訪ねると、そこには書類がどっさり詰まった大きな青いケースが山積みされていた。
「さくらんぼなど人気の高いフルーツの受付が3月に始まったので、関係書類の受付や発送などで本当に忙しくて…」
そんなうれしい悲鳴を上げているのは、山形県天童市ふるさと納税推進係主査の沼澤賢次さんだ。
ふるさと納税は、地方自治体に寄付をすると、その分税金が控除される制度。寄付金額に応じて特産品などの「返礼品」をくれる自治体も多く、“普通に納税するよりずっとお得”と人気を呼んでいる。
2008年に制度がスタートした当初は返礼品を用意する自治体が少なく、寄付総額は約81億円にとどまっていたが、次第に競争が過熱。今や家電や日用品を返礼品にする自治体もあるほどで、2015年度の寄付総額は1650億円を超えた。
4月1日には総務省が換金性の高い商品券やプリペイドカードなどを返礼品にしないことや、返礼品の価格を寄付額の「3割以下」に抑えるよう、各自治体に通知する事態になっている。
認知度も高まり、ますますアツくなっているふるさと納税。現場の職員たちはどんな思いで業務に当たっているのだろうか。
東京から山形新幹線で約3時間。山形盆地のやや北寄りに位置する天童市は、人口約6万人あまりの小さな市だ。将棋駒と温泉の街として知られ、とくに将棋駒の生産量は全国の約9割を占める。街のあちこちに将棋駒を象かたどった看板がある。ポストの上には王将の駒がのり、市内の観光案内も駒の形をしている。
訪れた天童市役所も、トイレや各フロアの案内板まで駒の形という徹底ぶりだった。
そんな天童市が今、ふるさと納税で注目を浴びている。肉とお酒で圧倒的人気を誇る宮崎県都城市に続き、年間申し込み数は約18万件で全国2位、寄付金額は32億円を超えて3位(2位は静岡県焼津市)という好調ぶりだ。
その理由を探るために担当するふるさと納税推進係を訪ねてみると、拍子抜けするほどの小所帯だった。メンバーは職員3人とパート4人。たった7人で全国有数の人気を誇るふるさと納税を支えているのだから、冒頭のように担当の沼澤さんが大忙しなのもうなずける。