「記憶にない」──ロッキード事件以降、政治家答弁の常套句となった言葉だ。その言葉が嘘ではなく“本当に記憶にない”のだとしたら、そこには重篤な病が隠れているのではないだろうか。
「森友学園問題」を巡り野党から追及された稲田朋美・防衛相は当初、国会答弁では「顧問弁護士でもなく、裁判にも行っていない」と疑惑を完全否定していた。しかし、裁判に出廷していた記録が見つかると、言葉を詰まらせながら「記憶にないんです」と釈明した。稲田氏は現在58歳。仮に認知症なら「若年性認知症(※65歳未満で発症する認知症のこと)」と診断されるだろう。
元東京都知事の石原慎太郎氏(84)の発言も都民や視聴者にとっては記憶に新しい。3月3日の会見で、都知事時代に豊洲を市場用地に選んだ判断を問われ「担当者に任せていた」「契約書の記憶もない」と答えている。
2人の「記憶にない」発言について、あくまで“嘘をついていない”という前提で横浜新都市脳神経外科病院内科認知症診断センター部長の眞鍋雄太医師に答弁の様子を見てもらい医学的な見解を聞いた。
「認知症を疑うポイントは3つあります。【1】話しているときに無表情になっていないか、【2】質問から返答までの間があいていないか、【3】質問の主題に対して的確に答えているか、です。
まず稲田氏は、鋭い質問に対して動揺の表情が伺える。また、間を開けず『記憶にない』と返答している。他の質問に対するやりとりにはスムーズに答えているので、認知症の可能性は低いでしょう」
とすると、医学的分析では、ド忘れしているか嘘をついているかのどちらかということになる。いずれにしても、現職防衛大臣としての資質に疑問が生じるのに変わりはないが……。