国会では籠池スキャンダルが泥沼化し、与野党対決となるテロ等準備罪(共謀罪)法案の審議も始まった。安倍首相は「今国会で成立させる」と意気込んでいるが、議員たちの本音はそれどころではなさそうなのだ。自民党代議士がこういう。
「もうすぐ衆院の新しい区割り案が発表される。選挙区の線引きによって、多くの票を持つ後援会幹部が他の選挙区になったり、ライバル候補が有利になったりすれば死活問題です」
“法案審議などやっている場合か”という口ぶりだ。
国会は最高裁で違憲判決が出された衆院選の「1票の格差」是正のため、次の総選挙で衆院定数を10減らすこと(選挙区6減、比例代表4減)を決めた。青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県でそれぞれ定数1減となるが、影響は全国に及ぶ。2020年の人口推計をもとに、人口最小の鳥取1区との「1票の格差」が2倍を超える東京はじめ都市部の小選挙区で線引きの大幅見直しが行なわれる。選挙区割り変更は全国100近くにのぼると見られているのだ。
現在、政府の衆院選挙区画定審議会(区割り審)が新区割り案を策定中で、今月中にも発表される見込みだ(最終期限は5月27日)。
「一国一城の主」にたとえられる国会議員にとって、定数削減はいわば“領地召し上げ”であり、区割り変更は“お国替え”といえる。過去の定数是正では引退に追い込まれたり、選挙区を失って比例に回る政治家が出るなど、多くの“血と涙”が流れた。