ふるさと納税は、地方自治体に寄付をすると、その分税金が控除される制度。寄付金額に応じて特産品などの「返礼品」をくれる自治体も多く、“普通に納税するよりずっとお得”と人気を呼んでいる。
そんなふるさと納税で今、山形県天童市が注目を浴びている。肉とお酒で圧倒的人気を誇る宮崎県都城市に続き、年間申し込み数は約18万件で全国2位、寄付金額は32億円を超えて3位(2位は静岡県焼津市)という好調ぶりだ。
天童市がふるさと納税の返礼品を始めたのは2014年春と決して早くはなかったが、さくらんぼ、もも、ぶどうなどの特産品が人気を呼び、2014年度は7億8000万円、さらに2015年度には4倍の約32億円が集まった。
「きっかけは、報道などで他の自治体が多くの寄付金を集めているのを知り、うちも“地場産業の振興とPRにつながる取り組みをしよう”と市長が判断したことでした。最初は農協や商工会議所に“何か出せるものはありませんか?”とお願いして回りました」
と山形県天童市ふるさと納税推進係主査の沼澤賢次さん。今では正反対に「うちのものも扱ってほしい」という事業者が殺到。返礼品として採用するか否かは審査会で審査したうえで決定するが、「断るのが大変」(沼澤さん)という状況だとか。
天童市の審査基準は全国的に見てもかなり厳しい方だろう。天童市内に本社がある、通販の実績がある、滞納がない、が応募要件で、個人ではなく会社か組合でなければならない。特産品に関しても、天童市で作ったものを原料としている、天童市内で製造している、天童市内で販売している、の3つのうち、2つをクリアする必要がある。それだけではない。
「農産物、農産加工品、温泉、木工製品、観光誘客につながるものに限定しています。品物もあくまでも天童市を好きになってもらうのが目的なので、天童らしさのあるものに限定しています。そうした事情を説明してお断りするのですが、申し訳なくて精神的にきついですね」(沼澤さん)
家電などをやらないのも同じ理由からだ。
「工場が市内にあっても、恩恵が行くのはほとんどが東京の本社だったり、外資だったら海外だったり。首都圏に強みがあるものを出しても、首都圏と地方の構造的な格差の是正にはなりません。ふるさと納税は、地方のブランドを磨くためのツールとしてこそ、有効なのだと思います」(沼澤さん)
返礼品の“評判”を保つには、品質のチェックも欠かせない。特産品の果物の初出荷の時には検品担当の職員が現場に出向き、色づきの具合などをチェックする。
「職員の実家がさくらんぼ農家だったりするので、だいだい質がわかるんです。それで写真を撮ってきて、みんなで“まだ早いからもうちょっと待ちましょう”というようにやっていました。それでも専門家ではないので、来年度からは目利きの人の力を借り、事業所に対する規格を統一します」(沼澤さん)