【書評】『さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで』/高田かや・著/文藝春秋/本体1000円+税
【著者プロフィール】高田かや(たかだ・かや)/実在する農業コミューンで生まれ、19歳まで共同生活を送る。2016年に出版した、小学生時代までを描いた『カルト村で生まれました。』(文藝春秋)が話題に。コミューンを出て一般社会で知り合った男性と結婚して11年目。
【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)
実在する農業コミューン(共同体)で生まれ育った女性が、そこでの小学生時代までの実体験をコミカルに描いて話題になった漫画『カルト村で生まれました。』(昨年刊)。本書はその続編で、中学生時代から19歳でコミューンを出るまでを描いている。
2冊の本によれば、「村」ではすべてのモノが共有で、お金は持たず、使わない。著者の両親は大学生のとき、その思想に共鳴して「村」に入り、そこで知り合って結婚し、著者が生まれた。
「村」では親と子、大人と子供は別々に暮らす。子供は近所の小中学校に通うが、部活動は禁止され、早朝や下校後は「村」で掃除や畑作業などを行う。義務教育終了後は学校に行かず、労働に専念する。
続編の本書では、日々、世話係の指導のもとで開かれるミーティングや、提出を義務づけられる日記などを通して、子供たちが「村」の思想に染められていく様が描かれる。子供たちは恋愛や学校の図書館の本を読むことも禁止されている。といって、「洗脳」はあくまでもソフトなやり方だ。ちなみに、「調整結婚」といって、村人は「村」の調整役が決めた相手と結婚する。