5年前に亡くなった事実婚の妻が本郷陵苑に眠るのは会社員の新保聡さん(49才)。住まいは昭島市だが、業務で本郷付近に来ることが多いため、「ここがベストでした」と言う。
「実家の代々のお墓は八王子のお寺にあります。ぼくは長男なので、そこに妻を入れる選択肢がなかったわけでもないですが、選ばなかった。妻自身が一度も会ったこともない人たちが入っているお墓に、ひとりで入るって、かわいそうじゃないですか」
4才上の妻だった。ふたりとも40代になってからの社内結婚。事実婚なのは「入籍する前に、妻にがんが発覚し、余命を知った妻が、入籍を拒んだから」。1年半の闘病となった。
ふたりともお酒が好きで、元気な頃、居酒屋によく飲みに行った。新保さんは、ふたりで呼び合った「さとちゃん あさちゃん」との文字と、徳利と猪口2つの絵を厨子に入れた。
「近くを通り、毎日のようにお墓参りに来ることもあれば、2、3週間空くこともあります。『あさちゃん』に、あんなことがあった、こんなことがあったと報告。もっとも、共通の友人たちもよく寄ってくれているので、報告がかぶることもあるでしょうが」
それぞれの人の、それぞれの事情。自動搬送式は、つい仕様の斬新さに目がいきがちだが、「お墓」としての役目は外墓でも室内墓でも同じなのだと、改めて思う。お参りしやすい環境が、人とお墓を近づけるのは確かだ。
※女性セブン2017年4月20日号