スタジアムやホール、歩道橋や海水浴場など、施設の名称を自治体が広告として販売するようになって久しい。最近では、ネーミングライツ販売に取り組む鉄道事業者が増えている。いま、日本中に広がある「副駅名称」や「副名称」と呼ばれる駅名販売について、ライターの小川裕夫氏がリポートする。
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3月26日、東京都交通局は都電荒川線の「熊野前」と「荒川二丁目」の2停留場に副駅名称を導入した。「熊野前」には“首都大学東京荒川キャンパス前”、「荒川二丁目」には“ゆいの森あらかわ前”という副駅名称がつけられている。
近年、鉄道事業者は正式な駅名のほかにも副駅名称をつけるケースが増えている。副駅名称をつける背景には、どんな理由があるのだろうか?
「東京都交通局では、利用客の利便性を図ることを目的としています。今回、都電荒川線の2停留場で副駅名称が導入した背景には、これまでの名称に加えて多くの人が利用すると想定される施設名を副駅名称に入れたことで、普段利用している人ばかりではなく、沿線外の利用者でもわかりやすいなり、より多くの人が都電荒川線を利用してもらえると考えたからです」(東京都交通局電車部営業課)。
確かに、「熊野前」という名称では、首都大学の荒川キャンパスがあることはわかりにくい。日常的に利用している乗客以外を取り込むためには、こうした利便性の向上は欠かせない。
そうした利用者の利便性向上を目的とした東京都交通局のようなケースがある一方で、別の狙いから副駅名称を導入している鉄道会社が増えている。例えば、東京-横浜間を地盤とする京浜急行電鉄(京急)は2013(平成25)年から副駅名称の導入を発表。その第一号として、7月に梅屋敷駅に東邦大学前という副駅名称が設定された。
「京急では副駅名称を新たな広告媒体として位置づけ、副駅名を販売を始めました。しかし、すべての駅で副駅名称を販売しているわけではありません。全72駅のうち『羽田空港国際線ターミナル駅』と『羽田空港国内線ターミナル駅』の2駅は対象外にしています。この2駅は公共性が高く、副駅名称を導入することで誤認される可能性があるので、それを防止するために対象外としています。また、品川駅・京急川崎駅・横浜駅・上大岡駅は、京急グループの施設のみの販売とさせていただいております」(京急電鉄広報課)
京急の副駅名称を販売する代理店のホームページには、副駅名称の広告料金が掲出されているが、最高ランクの特A駅は年間契約で月60万円(税別)となっており、グループ企業といった理由や長期契約による割引はないという。