「大会に出ると、告別式には参加できても斎場には行けないので沙保里はぎりぎりまで逡巡していました。でも、息子たちが『お父さんはきっと会場で“何しとんじゃ、あいつは”と待っている。だから行ってこい』と送り出しました。沙保里が会場につくと、外国の選手が次々と寄ってきてお悔やみを言い、ハグをしてくれたそうです。
夫は、沙保里が幼い頃から“頑張ってレスリングをすれば、いろんな人たちとつながりができる。強くなって世界に出れば、外国の人とも絆ができるんだ。だから強くなれ”と話していました。
子供の頃の沙保里はそんな話をされても、ピンとこなかったかもしれませんが、父親が亡くなった時、それがどれほど素敵なことであるかを実感したと思います」
幸代さんも、夫に代わって試合を見届けようと会場に向かった。栄勝さんが亡くなってから睡眠もほとんどとれず、練習もままならなかった沙保里選手だったが、予選から決勝まで圧勝だった。
日本チームは8階級のすべてで勝利し、2年ぶり7度目の優勝を飾った。沙保里選手は試合後、こう語ったという。
「お父さんが上にいて、私を動かしてくれるようだった」
沙保里選手は、2020年の東京五輪への意欲も見せているが、幸代さんが34才の娘に抱くのは別の願いだという。
「早く結婚してほしいんですよね。本人はイケメンが好きですから、私は“イケメンではご飯は食べられないよ”って言うんですけど(笑い)。“お父さんみたいな人は絶対嫌や”と言いますが、私は主人みたいな人と結婚するんじゃないかなって」
※女性セブン2017年4月27日号