今、世間は落語ブーム。面白さはさまざまの落語家の中から、ここでは柳家喬太郎(53才)にクローズアップ。寄席の魅力を語ってもらった。
諸説あるが、江戸、明治、大正時代に作られた落語を古典落語という。『時そば』や『寿限無(じゆげむ)』は古典になる。一方、その時代以降に作られた落語を新作落語と呼ぶ。
喬太郎は、古典と新作、両方を巧みに演じる噺家として知られている。
例えば、『ハンバーグができるまで』は、別れた夫婦の1シーンを描いた。最後にホロリと涙させられる。『歌う井戸の茶碗』は、古典落語『井戸の茶碗』を大胆にアレンジした。とにかく登場人物が歌いまくるミュージカル調の落語になっている。
「テーマを決めて、新作を作っていません。『夫婦の愛をテーマに映画を作りました』とかありますけど、私の新作は、そういうメッセージ性を考えて作っていません。
身もふたもないことを言うと、新作を作りたいから作ります。『話を思いついたからやってみよう』ということですよね。あとは、新作しか演らない落語会に出演するから、切羽詰まって作るとか。試験勉強みたいなものですね」(喬太郎・以下「」内同)
では、その新作落語はどうやって作るのか――記者がそう言うと、創作ノートを見せてくれながら、新作落語『純情日記神保町編』の制作過程を説明してくれた。ある古書店を、閉店のために整理する男女のやり取りを描いた噺だ。
「これは、新作の落語会に出るので、去年の夏に作ったネタです。会場が神保町だったので、神保町を舞台にした話をやりたいな。そして神保町らしいものにしたいと思いました。
神保町といえば、一般的なイメージは古書店街ですよね。そこから連想されるものをざっとノートに書いていく。売り買い、バイト、店員、専門書、参考書、アダルト…。
神保町は学生街でもあるので、古い洋食店みたいなものがちょくちょくあるようなイメージだったんですよね。それで洋食店とか、喫茶店、大学…。思いついたものを並べてみて、そこから繋つないでいく。ここに動く人はどんな人だろうと。