読書離れの加速と同時に、書店が減少し続けている。2003年度に全国に2万880店あった書店は2016年度には1万4098店とわずか十数年で約3割も減った。毎年500店以上が閉店し、昨年も668店舗が姿を消した。
読書は楽しいし、面白い。人生を豊かにもしてくれる。でも、きっかけがないために本を読むチャンスを逃していることも少なくない。
『まちの本屋』(ポプラ社)の著書がある岩手県盛岡市のさわや書店フェザン店の田口幹人店長は、書店が減少していることがさらに本離れを加速させていると話す。
「用がなくても何気なく書店に行って、思ってもみなかった本を買う。そういう経験をしたかたは少なくないと思います。昔は本というものに触れる機会があって、当たり前のように本があった。ところが書店が消えていくことで、最近は、書店を身近なものに感じる人が減ってしまった」
美術大学出身で造形作品の制作も手掛けているコントコンビ・ラーメンズの片桐仁さんは、読書家であると同時に「本屋を見つけて、ちょっとでも時間があれば必ず入る」と言うほどの“本屋好き”だ。
「本屋に入って雑誌がばーっと並んでいたり、本が平積みされたり。それを眺めているだけでワクワクしますよね。例えば青山ブックセンター六本木店は、中二階の広いフロアにビジュアルの本、演劇の本、図鑑、文庫も並んでいて、そこをブラブラするだけで楽しいんです。
美術館を取材することが多いのですが、六本木に来て国立新美術館や森美術館を訪れた後にこの本屋に立ち寄る。美術館に行って創作意欲を刺激され、その昂揚した気持ちをキープしたまま本屋に行きたいんです」(片桐さん)
書店は人と本との出会いの場。本を買いに来る客をただ待つのではなく、少しでも多く本との“いい出会い”をしてもらうために努力を惜しまない書店もある。
前出・田口さんが店長を務めるさわや書店フェザン店を訪れると、大型書店に比べれば決して広いとはいえない155坪の店内に、あちこちに手書きの文字がびっしり書き込まれた張り紙がしてあった。
例えば林真理子さんの新刊『我らがパラダイス』(毎日新聞出版)には〈老いた両親の『介護』という深刻な問題に直面した3人の女性の心理を愁訴かつコミカルに描かれている(中略)不条理な現実に対する徹底的な抵抗〉(一部抜粋)とある。タイトルだけではわからない、そして単なる要約ではない“その本から何を感じ取ってほしいか”が、熱く綴られている。
「新刊だからPOPをやるということではありません。お客さまにとって“ああ、出会いたかったのはこの一冊だ”というタイミングがあって、買われていくんです。古い本でもいつか旬がやってくる。そのタイミングで、いかにお客さまに提案できているかを、書店員は問われているのだと思います」(田口さん)