弾道ミサイル実験を続ける北朝鮮に、過去20年の「戦略的忍耐政策」の失敗を認めたアメリカ、政情不安がおさまりそうもない韓国はおろか、“血の同盟国”中国ですら、有効な手立てを講じることが出来ない。日本は金独裁王朝に、どう向き合うべきか、作家で元外務相主任分析官の佐藤優氏が解説する。
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北朝鮮との付き合い方が一層難しくなっている。3月6日、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを4発発射した。この事件自体はそれほど珍しくない。問題は北朝鮮がこのミサイル発射に対して与えた意義だ。
〈北朝鮮の朝鮮中央通信は7日、日本海に向けて4発発射した弾道ミサイルについて、有事の際に在日米軍基地への攻撃を担う朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊の訓練だったと報じた。北朝鮮が在日米軍を名指しにした意図はどこにあるのか。
韓国統一省の関係者は、北朝鮮が日本に言及したことについて「露骨で異例だ」と話す。その上で、「(朝鮮半島有事の際、後方支援する)在日米軍基地を制圧する意図があることを明らかにしたものだ」と指摘した。
韓国のある国防専門家は、今回の部隊による弾道ミサイル発射に金正恩・朝鮮労働党委員長が立ち会ったことにも注目。「安倍晋三首相へのメッセージではないか」と話す。局面を転換するためにトランプ米大統領と親しい安倍首相を刺激したのではないかとの見立てだ。〉(3月8日「朝日新聞」朝刊)
従来、北朝鮮の暴発は、日米安全保障条約第6条で対応すべき事態だった。6条の前段では、〈日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。〉と定められている。