【書評】『ミステリーな仏像』/本田不二雄・著/駒草出版/本体1500円+税
【著者プロフィール】本田不二雄(ほんだ・ふじお)/1963年熊本県生まれ。編集者・ノンフィクションライターとしておもに日本の神仏世界の魅力を伝える書籍・雑誌の編集制作に携わる。著書に『弘法大師空海読本』(原書房)、『へんな仏像』(学研パブリッシング)。
【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)
「神仏探偵」を自称する著者が全国で出合った奇妙な仏像100体ほどについて、なぜそれらが造られたのかを探る。
たとえば、内部に骨格と臓器を備えた愛知県栄国寺の阿弥陀如来半跏像。江戸初期、寺のあたりには刑場があり、腑分け(解剖)も行われていたが、そのことと関係があるのだろうか?
浄土真宗門徒の多い富山県に集中して見られる、ミイラのように痩せこけた骨と皮だけの五劫思惟(ごこうしゆう)阿弥陀仏坐像。キリスト教における磔刑のイエス同様、代理苦のイコンなのだろうか? 銀杏の大木に彫られた福井県諦応寺の立木銀杏観音像など立木に彫られた仏像は、日本古来の霊木信仰と仏教の混合なのだろうか?
石川県全性寺に安置される、右腕から生まれたばかりのブッダの上半身が垂れ下がる摩耶夫人像(摩耶夫人はブッダの生母)。仏教における聖母信仰の表れなのだろうか? 痩せさらばえ、醜い顔と体を晒した京都府退耕庵に伝わる小野小町百歳像は、この世の無常を物語っているのだろうか……? 著者は調査と推理を重ねる。