たったひとさじのはちみつが体にいい、作りたてより一晩寝かせた方がカレーにはコクが出る…これらの“常識”が、時として人の生命を奪うことがある。そんな最近のニュースに、ハッとした人も多いだろう。
今年3月、東京・足立区で生後6か月の男の子が食中毒で死亡した。その原因は、離乳食に使われていたはちみつだった。はちみつに含まれているボツリヌス菌が、乳児ボツリヌス症を引き起こしたとみられ、国内で初の死亡例となってしまった。
さらに先月8日には東京・世田谷の私立幼稚園で、カレーライスを食べた園児や教職員など、70人以上が吐き気や下痢などの症状を訴えていたことがわかった。この集団食中毒はウエルシュ菌によるものだ。
ボツリヌス菌もウエルシュ菌も自然界に多い菌だが、ボツリヌス菌は成人の腸では免疫で対処できても、1才未満の腸では不可能であることがある。一方のウエルシュ菌は、常温で放置された煮込み料理の中などで増え、腸に届いてから悪さをするため、年齢とは無関係に警戒が必要だ。
今回の事件が起きてしまったことに「非常識だ」と驚いているのは現役のパパ・ママたち。
「1才未満の子にはちみつをあげてはいけないのは常識だと思っていました」(35才・会社員)
「はちみつはダメ。病院でそう教わりましたよ」(32才・主婦)
その一方で、もっとびっくりし、戸惑いを隠せないのは、祖父母世代だ。
「はちみつがダメなんて…。それどころか、赤ちゃんの肌が乾燥しているときにははちみつを塗ってあげていました…それも危険なのかしら?」(76才・主婦)
「私が子育てをしている時には、はちみつがあまりなかったので、この知識は初耳でした。知らないって怖いです」(68才・パート)
今回の事件は、子供と食に関する知識について、こうした世代間ギャップが大きいということが浮き彫りになった。
小児科専門医なごみクリニックの院長である武井智昭さんは、命にかかわる食べ物に関する知識は、常に見直すべきだと話す。