夫の死後に夫や姻族との縁を切る人も
結婚15年目の2007年にうつ病から夫が自殺したという東京在住の福田敬子さん(仮名・50才)。『姻族関係終了届』(いわゆる「死後離婚」の申請書)『復氏届』(旧姓に戻すこと、後に詳述)は提出済みだが、当時小中学生だった娘2人は、父の姓のまま。義父はその3か月後に、義母は今から2か月前に死去した。
「葬式は密葬にしましたが、夫の義父母だけでなく、親族まで大人数でやってきて、嫁である私や娘たちは、まるで彼を死に追いやった張本人とでもいうような目で見られていました」(福田さん、以下「」内同)
夫は東北の田舎出身。家族で帰省するたびに、「嫁」扱いされ、休む間もなく働かされることに違和感を持っていた福田さんは、葬式をきっかけに、義親や親族とも一切連絡をとらない状態が続いていた。
やがて、仕事で夫の姓を名乗るたびに、夫が自殺したという事実を思い出し、次第に名乗ることすら重く感じるようになったという。
「夫が自殺したショックから立ち直るのに4、5年かかりました。そして、思考が整う頃に『復氏届』の存在を知りました。名字を元に戻せば、つらいことから解放されそうな気がして役所に行くと、『姻族関係終了届』も一緒に出すように言われ、その場で書類に記入。数分で手続きは終わりました。手続きをした5年前、まだ2人の娘は学生だったこともあり、夫の名字のままにしています」
提出直後は、すっきりした気持ちだったという福田さん。だがその後、携帯代の支払いや進学書類など、子供たちと名字が違うため、そのつど娘たちとの親子関係を示す住民票を提出する手間がかかってしまった。
「長男だった夫は、自殺を理由に親族の墓には入れてもらえず、私と娘たちだけで樹木葬を行いました。今でも夫の親族を私は許すことができません」
だが、今は名字が違っても、“自分を娘たちの母親にしてくれた人は夫しかいない”という思いもあり、いずれは自分も夫と同じ場所で、樹木葬にしてもらうつもりだ。そして成人した娘たちは今、義母の遺産相続の手続きをしているという。