人間の記憶を貯蔵する「大脳皮質」は加齢に伴い縮小し、記憶力も低下していく──これが定説とされてきた。しかし高齢になっても圧倒的な記憶力を誇る「スーパーエイジャー」たちは、その定説を覆す。
80歳を過ぎても50~65歳の人と同程度の記憶力を持つ人たちがいる。脳科学の分野で「スーパーエイジャー」と呼ばれる彼らの大脳皮質は、平均に比べて著しく厚いことが分かっており、それが記憶力の維持に結びついているとされてきた。しかし、なぜ彼らの大脳皮質が厚いのかは解明されていなかった。
そんななか、今年4月に米国・ノースウエスタン大学のアマンダ・クック氏らが発表した研究は画期的なものだった。一般の高齢者に比べて、スーパーエイジャーは加齢に伴う脳の萎縮率が半分以下だったことが判明したのだ。これを受け、「脳の萎縮を食い止めるスーパーエイジャーの生活習慣」に注目が集まっている。
スーパーエイジャーのライフスタイルとはどんなものなのか。『老ける脳と老けない脳』(主婦の友社刊)の著者である友寄英哲氏(84)は、54歳のときに円周率の4万桁暗唱でギネス記録(当時)を樹立。昨年にはルービックキューブの全ての面を目隠し状態で揃える競技で、自身の持つ世界最高齢記録を更新した。友寄氏がこう話す。
「もともと暗記は苦手でしたが、日々、あいた時間を見つけては記憶力を鍛錬し続けてきました。脳に新しい刺激を与え続けることを意識しています。例えば、新聞やネットニュースを毎日チェックするだけでなく、『その話を誰かに面白く伝えるにはどう説明したらいいのか』を考える。脳に“記憶”と“応用”という2つの刺激を与えることで、ニュースが頭の中で整理されて定着するんです」