【書評】『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』/上間陽子・著/太田出版/1700円+税
【評者】香山リカ(精神科医)
温暖な気候、きれいな海、おいしい食べ物。誰もが大好きな沖縄だが、一方で「米軍基地の集中」や「全国でワースト1位の年収」など大きな問題を抱えている。本書はそんな沖縄の“夜の顔”を浮き彫りにした衝撃的な一冊だ。
沖縄で生まれて暮らす、10代から20代の6人の女性が自分の物語を語る。そのほとんどが貧困、親の離婚などで“おとなのいない家庭”で子ども時代をすごし、そこから逃げるように非行グループに入り、彼氏の部屋に身を寄せ、10代で妊娠、出産。そしてお決まりのように彼氏の暴力にさらされてそこからも逃げ、水商売や風俗業に足を踏み入れる。
その中のひとり、亜矢は中学2年のときに集団レイプされた経験を持つ。当時の恋人や親も事件を知ったが、結局、母親の反対により警察への被害届は出されず、亜矢は親に責められた。本来なら自分を守ってくれるはずの親が、レイプ被害を隠そうとしたのだ。
どれほど絶望したか想像にかたくないが、亜矢は「開き直りが早い子だから、引きずらないね」と強気に振る舞い、その後も多くの男性と性体験を持つ。聞き手でもある著者は、それは「もう一度同じような場面を再現して、今度こそ、その恐怖に打ち勝とうとして行われる」、レイプ被害者にはよくある自己回復の行動だと解説する。