若者の読者離れが叫ばれるなか、誰もが読書家になるのは刑務所、あるいは拘置所だ。自由を奪われた彼らはどんな本を読んでいるのか? ノンフィクションライターの高橋ユキ氏が迫る。
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山田誠二受刑者(63)は2015年11月、自分が経営している相模原市のコンビニエンスストアに強盗を装って侵入し、従業員を出刃包丁などで刺して殺害。今年2月に殺人罪で懲役15年が確定した。彼とは、手紙を通じたやり取りになった。
「家内に頼んで差し入れてもらったのは全国の刑務所でどんな作業などをしているのかが詳しく書かれた本です。無期懲役で現在20年服役している美達大和という方が書いた『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)などを差し入れてもらいました。
人を殺した人間はどんな気持ちで、またどんな償いの気持ちを持たなければいけないのか。それに加えて刑務所の中の生活も知ることができるので、4回ぐらい読み直しました。シベリア抑留の本も読みましたが、この本を読んだ時は刑務所暮らしなど天国に思えるだろうと思いました」
評論家・小熊英二氏が書いた『生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後』(岩波新書)のことだろう。
「今読んでいる本は『黒い巨塔 最高裁判所』(瀬木比呂志著、講談社)といって、元裁判官の著者が最高裁の闇を書いた本です」
同書は最高裁判所を舞台に、頻発する原発訴訟をめぐる裁判官らの権力争いや組織の腐敗を描いた作品である。裁判に対する何らかの思いがあるのだろうか。