韓国経済はかつて、「日本を追い抜く」「世界を牽引する」と喧伝された。それが今、苦境に喘いでいる。なぜ韓国は、経済の面で先進国になりきれないのか? 大前研一氏が解説する。
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一般的に1人あたりGDPが2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国とされる。だが、3万ドル経済に向かおうとする中進国は、しばしば為替や労働コストが高くなって競争力を失い、3万ドルに近づくと落ちるという動きを繰り返す。これが「中進国のジレンマ」だ。
韓国経済も、調子が良くなるとウォンや労働コストが高くなり、そのたびに競争力を失って落ちるという悪循環に陥っている。韓国が「中進国のジレンマ」から抜け出せない最大の理由は、イノベーションがないことだ。
では今後、韓国は何らかのイノベーションによって「中進国のジレンマ」から抜け出せる日が来るのだろうか?
残念ながら、当面は難しいだろう。なぜなら、戦後日本は財閥解体で従来の秩序が崩壊して経済にダイナミズムが生まれたが、韓国は未だに財閥支配で縦方向の秩序が固まっているからだ。
その秩序を壊してイノベーションを起こすためには、松下幸之助氏や本田宗一郎氏のような学歴がなくてもアンビション(野望)のある起業家が必要となる。
しかし、韓国は極端な学歴社会だから、アンビションを持っている人でも、いったん受験戦争に負けたら這い上がることが難しい。つまり、イノベーションが起こりにくい硬直した社会構造なのである。
また、受験戦争に勝って財閥企業に入った人たちも、ファミリー企業なので出世に「ガラスの天井」があるし、近年は45歳くらいでリストラされるケースも多く、すんなり定年までエリートの道を歩むことが難しくなってモチベーションが低下している。どこをどう切っても、反転できる要素が見当たらないのだ。