「大震災が起きたのが東北でよかった」趣旨の発言をした今村復興相が事実上、更迭された。だが憤って当然の東北の人々は、あざやかな「大人力」で切り返してみせた。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が考える。
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何とも呆れた発言であり、トホホな騒動でした。今村雅弘・前復興相が、25日夜の講演で東日本大震災について「まだ東北で、あっちの方だったからよかった」と発言。記者だけでなく自民党内からも厳しい批判を受け、その日のうちに辞意を固めました。今村氏は今月4日の記者会見でも、自主避難者について「本人の責任でしょう」と発言するなどして物議を醸しており、事実上の更迭と言われています。
騒動の直後から、この「東北でよかった」発言が思わぬ方向に拡大。ツイッター上で「#東北でよかった」あるいは「#東北で良かった」というハッシュタグ(同じテーマの投稿を見つけやすくする仕組み)を付けて、たくさんの人が次々と、東北の美しい風景や東北での心温まるエピソードをツイートしています。
ぜひ試しに、ツイッターで「#東北でよかった」を検索してみてください。今が盛りの美しい桜の写真、「祖父母が青森にいて、時々リンゴを送ってくれて、すごく美味しい!!」といった呟き、羽生結弦選手の写真と「この人が、東北の象徴です」というコメント……。東北愛に満ちた多くのツイートを見ていると、胸に熱いものがこみ上げてきます。ツイッター上には「こんなに泣けるハッシュタグは初めて」といった声も。
今村元大臣の発言を受けて、自然発生的にこういう現象が起きていることは、近年まれに見る「いい話」と言っていいでしょう。東北の人たちは、失礼な暴言にもちろん腹が立ったはず。しかし、怒りをストレートにぶつけるのではなく、ユーモアを込めながら「東北でよかった」という言葉を逆手にとって、東北はこんなに素敵なところなんですよとアピールする──。その姿に、無限の大人力と懐の深さを感じずにはいられません。
一連のツイートの中には「ひどい言葉を言われても、ひどい言葉で返さないで、何言ってんの、私たちの住む地の素晴らしさを知ってよって、みんなが笑う、そんな東北でよかった」というものもありました。この現象が起きていることの意味や心意気が、極めて的確に言い表わされています。