経営危機に陥った東芝はすでに白物家電や医療機器の部門を売却し、子会社である米原子炉メーカー・ウエスチングハウス(WH)を連結から切り離して海外の原発事業から撤退する方針を決めている。さらに、主力の半導体事業を売却してインフラ事業に集中するという。もはや東芝再生は打つ手なしなのか。
東芝の再建には公的資金を注入すべきという意見もある一方で、一企業の救済に血税を投じることには批判も強い。
経済評論家の森永卓郎氏は前者を支持し、年金資金を投入してでも東芝を救えと唱える。“庶民の味方”の意見を述べることが多い森永氏にしては意外な見解だが、理由をこう語る。
「東芝の状況については、どうも世間には誤解がある。不正会計には問題がありましたが、それ以外で東芝が何か能動的に悪いことをしたわけではないんです。アメリカにはめられて、WHに騙されて、手元資金がショートしてしまっただけなんです。
米ウエスタンデジタルが名乗りを挙げ、東芝の半導体事業を二束三文で買おうとしていますが、それでは日本の技術が海外流出するばかりか、国益も損ないます。アメリカを儲けさせるための密約でもあるのかと疑いたくなるほど馬鹿げた行為です。
半導体事業の買収では、ウエスタンデジタルだけでなく台湾の鴻海精密工業も手を挙げている。奪い合っているのは、儲かる事業だから。それを売ってはなりません」
だからこそ、政府は公的資金を東芝に投じてでも、救済するのが筋だと言うのだ。