スマホ、インターネットなどの影響で若者の読書離れが叫ばれる昨今、そこに行けばあらゆる人が読書家になると言われる場所がある。刑務所、あるいは拘置所だ。元刑務官の坂本敏夫氏が語る。
「刑務所で受刑者は刑務作業を行ないますが、17時に晩御飯を食べたら21時までは自由時間。土日は刑務作業もお休みです。つまり、受刑者たちは暇なんです。雑居房では19時から21時まで決められたチャンネルのテレビが観られますが、独居房や拘置所にはありません。ラジオも決まった時間にしか流れない。拘置所にいる未決囚に至っては、裁判がなければずっと自由時間が続きます。そんな生活ですから、読書こそが最大の娯楽なんです」
未決囚や受刑者らが塀の中で本を読むには、いくつかの方法がある。
「自分が警察署や拘置所に収容される際に持って入る方法のほかに、差し入れ、また自分のお金で購入する方法があります。被収容者の手元に届く前に、施設の職員が内容をチェックします。身寄りがなく、購入する財産もない被収容者もおりますので『官本』というものが各施設にあります」(法務省矯正局成人矯正課)
では、囚人たちはどんな本を読んでいるのか。2009年に発覚した首都圏連続不審死事件で、4月14日に死刑が確定した木嶋佳苗は、『週刊新潮』に寄せた遺言手記で、話題のベストセラー『夫のちんぽが入らない』(こだま著、扶桑社)を読了したことを綴っていた。