開催まではインフラ整備等の特需効果で景気が良くなる一方、五輪が終わると特需剥落という反動で景気が悪くなる。事実、五輪開催決定から7年間で客室数が倍増したリオでは、五輪後客室単価はもちろん稼働率も下降、閑古鳥が鳴いているホテルが多いという結果に。
東京オリンピックはコンパクト五輪がコンセプトとはいえ、やはり開催以降の懸念材料は多い。そもそも2020年頃からの生産人口の減少加速、2022年からは団塊世代が後期高齢者になる「超高齢化時代」に突入する。
いずれにせよ、ホテル業界は五輪後に訪れる急激な稼働率やADR低下による経営難という最悪のシナリオをも念頭に置き、インバウンド率の抑制や日本人客の感覚に見合った料金変動を想定すべきだろう。
すでに「ホテルニューオータニ」では、五輪後の客室数供給過剰による需要減を見越した上で、サービス向上や目的研修などに力を入れている。伝統あるホテルだけに、社員一人ひとりが経営の状況を意識した上で、顧客をつかんでいく発想や行動が必要になるという考えからだ。
また、東京オリンピック開催イヤーの1964年に開業した「東京プリンスホテル」は、4月1日にリニューアルオープン。従来のクラシカルな空間を承継、日本の観光発展とともに歩んできた伝統を重んじるコンセプトを打ち出した。従前からの個人・法人の顧客に好評だという。
オリンピック特需を開催期間のみに焦点を合わせるというような一過性で終わらせるのではなく、開催後まで見据えた戦略が観光産業・ホテル業界でも重要だ。過去の開催都市でもオリンピック後の不況で支持を得たのは、地域や従来の個人・企業に主眼を置いてきた施設だという。
オリンピックまで景気はこのまま上がっていくという楽観主義と高揚感に包まれる中で、“東京”オリンピック効果を“地方”の多様性経験へとつなげる観光の具体的戦略も求められている。山高ければ谷深し──。身の丈にあった成長を続けるホテルが吉と出るのか凶と出るのか今後も注目していきたい。