かくいう私は筒井康隆氏の熱狂的ファン「ツツイスト」を自称する者であり、氏のデビュー作「お助け」以降、殆どすべての作品を通読してきた。私を含めたツツイストらによる件の氏発言は、いつもの筒井康隆であり特段驚くにはあたらない「通常運転」と言ったところだ。氏の作品を通読していれば、一見して露悪的に思える今回の発言の、何をいまさら驚愕に値するのかと理解に苦しむ。
筒井康隆と言えば、一般的には代表作として『時をかける少女』『七瀬ふたたび』などがいの一番に思い出されるであろうが、前者はジュブナイル的SFであり「筒井文学」の主流ではなく、補助輪的作品である。後者は超能力活劇だがこれも筒井文学の主流ではない。筒井氏は今次「炎上」の後、朝日新聞のインタビューにこう答えている。
「あんなものは昔から書いています。ぼくの小説を読んでいない連中が(批判を)言っているんでしょう。(中略)ぼくは戦争前から生きている人間だから、韓国の人たちをどれだけ日本人がひどいめに遭わせたかよく知っています。韓国の人たちにどうこういう気持ちは何もない」(4月7日・朝日、括弧内筆者)
この言が、筒井氏の真意のすべてであろう。