◆「サインくださ~い」事件
記者会見が始まると、織田代表がチェーン付きの代紋……最高幹部のそれをつけていた理由が分かった。組長が存在しないからだ。中央に座った池田組長が説明した。
「本来、我々の業界では盃を重んじ、忠誠を誓うというのが本筋ですが、一昨年8月27日に、その盃の意味を崩壊させ、合わせて絶縁・破門状の重みも崩壊させたのが、神戸山口組であります。この現状の中で我々は盃よりも、精神的な同志の絆に重きをおき、あえて盃事は一切執り行ないません。また組長はあえて空席とし、代表制という形を取りましたが、これは我々が当然のごとく組長は織田代表がなるものと思い、皆で再三お願いに上がりましたが、代表のたっての強い意志のもと、固辞され承諾は得られず組長は空席となりました。
(中略)
本来我々の業界では下の若い者が上を支えるのが当然とされてきましたが、任侠団体山口組では、皆が平等で、共に支え合い、助け合えるような組織作りをしたいと切に請われ、やむなく、このような形を取ることとなりました事をここに報告させて頂きます」
盃を結んだ親分が不在だから、当然、若い衆を束ねる若頭もいない。本部長となった池田組長が実質的な若頭役である。これまでのヤクザの定義を当てはめると、任侠団体山口組は暴力団組織の一次団体の要件(階層的に組織を構成している)を満たしていないことになる。暴対法を熟読し、指定外しを狙った可能性は高い。