貴乃花親方が現役だった時代の若貴ブームを彷彿させる現在の相撲人気を下支えするのが、土俵上でのガチンコ力士たちのぶつかり合いだ。30年以上にわたって八百長問題を追及してきた本誌・週刊ポストが「ガチンコの証左」を検証する。
ガチンコか否かで興味深いのが「決まり手」だ。「中盆」として八百長相撲を仲介し、その実態を本誌で詳しく証言してきた元小結・板井(板井圭介氏)は、著書『中盆』で横綱・千代の富士の53連勝のうち、ガチンコはわずか19番だったと明かしている。
その19番の決まり手を見ると、「寄り切り」が11番で最も多く、「上手投げ」が5番、「突き落とし」「上手出し投げ」「下手投げ」が各1番ずつとなっている。
一方、板井氏が八百長と指摘した残り34番では、「寄り切り」が9番で最も多く、「上手投げ」が7番で続くところまでは同じだが、その後にガチンコ相撲では1度もなかった「送り出し」と「つり出し」が各4番で続いている。
板井氏は、「八百長が蔓延る理由の一つは、ガチンコ相撲で土俵際までもつれてケガをしたくないから。だから八百長の一番では、寄り切り、送り出し、つり出しなど土俵下に落ちたりしない決まり手が自然と増えていた」と振り返る。
それを知った上で、横綱・稀勢の里の決まり手を見ていくと、今年の初場所、春場所の2場所連続優勝であげた27の勝ち星のうち、「寄り切り」が13番、「押し出し」「突き落とし」が4番で続く。「送り出し」は1番だけで、「つり出し」はゼロだ。