ペット医療には健康保険制度がなく、いわゆる“標準治療”もない。すべてが自由診療であり、診療代をいくらにするかは「獣医の言い値」となっている現状もある。しかも、ペットの犬・猫の数は減っているにもかかわらず、動物病院と医師数は増えパイの奪い合いとなっている。そのため、飼い主の無知や焦りにつけ込んで、“無駄な検査・治療”が少なからずあるのが現実だ。愛犬・愛猫のために知っておくべき正しい知識を紹介する。
●「ワクチン注射」の適正価格
狂犬病の予防注射が法律で義務づけられるなど、「ワクチン注射」のために動物病院を訪れる機会は多い。しかし、ワクチンの価格は病院によってまちまちだ。
「狂犬病の予防注射の相場は3500円前後。その他3~5種類程度の混合ワクチンで5000~6000円。1万円未満で打てるものがほとんどで、それ以上は高いと考えたほうがいいでしょう」(ペット保険会社の社員)
●死亡リスクのある「フィラリア治療薬」
蚊が媒介する寄生虫・フィラリア。犬の肺動脈などに寄生してしまった際の治療薬として使われてきた「イミトサイド」は、呼吸困難や失神などの副作用に加え、死亡例も複数報告されている。2014年末に国内では販売終了された薬だが、「それ以前に流通した在庫がまだ市場に残っており、現在も投与され得る」(ある関西の獣医)という状況がある。
「フィラリアは放置すれば肺や心臓などが機能不全に陥り、苦しみながら死に至る重篤な病気であり、治療薬にある程度の副作用リスクがあるのは仕方がない。ただし、専門技術を持つ獣医師であれば首の静脈から器具を入れて寄生虫を除去する手術も治療の選択肢となる。イミトサイドを投与するといわれた場合は、少なくとも“それ以外の選択肢はないのか”と質問し、納得した上で治療に進むべきでしょう」(同前)