2006年創設の古馬牝馬GIであるヴィクトリアマイル。ここを目標に、さまざまな路線を歩んできた男勝りの女傑たちが府中の直線でキレ味を競う。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、ヴィクトリアマイルが牝馬にとってどのような意味をもっているのかについて解説する。
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東京競馬場に薫風が吹いています。ヴィクトリアマイル、いいレースですね。風になびく青々としたターフが、女傑たちを歓迎するようです。
桜花賞では素質こそ感じさせるものの、体質や精神面で幼さが目立った牝馬が、1年たっただけで見違えるように「大人の女」になってくると、待ってましたとばかりに出したくなる。馬は人間の4倍のスピードで成長するということを実感します。牝馬のレースとしては、桜花賞の次によいレースだと思っています。
初夏のこの時期に照準を合わせて調教することで、牝馬はさらに強くなる。ヴィクトリアマイルで強い競馬をすれば、秋のGI戦線への道が大きく開ける。こういった魅力の理屈はいくらでも言えるのですが、結局は東京競馬場の芝のマイル戦が私は好きなんです。
広くて直線が長く、紛れが少なくて力勝負に持ち込める舞台。思い切った戦術を使う馬も多くなく、フロック勝ちは少ない。調教師としては胸を張って馬を送り出せます。
ただし、そう考える調教師も当然多く(笑い)、牝馬限定だからといって相手関係が楽になることはありません。