なぎら健壱(65)といえば多趣味で知られている。カメラ、散歩、自転車、落語、酒、がらくた収集……。しかも、その一つひとつにとことんのめり込む。
「凄いです、私。専門家と対等に話せるくらいまで、本を読んで理論武装しますから。貧乏性っていうのもあるんでしょうね。子供の頃、貧しくてモノを買ってもらえなかったから、大人になって下手に金を使えるようになったら、それ一筋にいっちゃうんですね」
イメージに合わないが、数年間、ゴルフに凝ったこともあった。賭けに負けた罰ゲームとして始めたのだという。だが、やるとなればレッスンプロにつき、一晩千発打ち、本を読みまくった。羨ましいのは、そうした趣味が仕事につながることだ。
飄々としていて、トボケたようなキャラというイメージが強いが、実はかなりの硬派でもある。外で飲んでいて、タチの悪い客に絡まれることもある。喧嘩になりかけ、マネジャーが止めたことが何度もあった──。マネジャーから聞いたそんな話を振ると、なぎらは即座に否定した。
「止めたなんて、マネジャーの美談です。私、その前に殴っちゃいますから」
電車の中で騒ぐ若者など態度の悪い乗客がいると、降りるときに蹴飛ばしていく、とも聞いたが。
「そんな卑怯なことはしませんよ。ちゃんと乗ってる間に殴ります。“車内で騒ぐのはやめろ”ゴツンって」
注意したいと思っていても、見て見ぬふりをする人が多い。
「やりませんよ、人としての節度があれば。最近はなるべくやめてますよ、なぎら健壱だとバレちゃうからね」