「これまで海外に逃亡した腐敗犯は2万人、横領された国家資産は1兆元(約17兆円)にも達する。追及の手を緩めてはならない」
こう檄を飛ばすのは李書磊・中国共産党中央規律検査委員会副書記だ。李書磊といえば、長年、習近平のスピーチライターを務めてきた最側近。10年後の「習近平後継」として頭角を現しつつあるこの男の人物像とは? ジャーナリストの相馬勝氏が迫る。
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李書磊は今年1月、北京市副市長から規律検査委副書記に転出した。そのトップである同委書記は習近平の盟友かつ、最も信頼している党最高幹部の王岐山で、習近平指導部にとっての最重要課題である反腐敗闘争を一手に担ってきた。そのため、王は8回も命を狙われてきたといわれる。
そのような党中枢の最重要部署である規律検査委のナンバー2格となる副書記に任命されたことで、李に対する習近平の信頼は並々ならぬものがあることがわかる。それは李が同委の中で任務達成が最も困難とされる国際部門のトップに就いたことが物語っている。
そのポジションの正式名称は「国際追逃追臟工作弁公室」で、簡単に言うと「国際逃亡犯追跡逮捕・不法資産没収グループ」(以下、国際グループ)だ。
リード冒頭の李の発言は3月21日から24日まで北京で開催された同グループ全国大会の演説の一部だ。
実は李がグループのトップに就任したことは、この日の大会開催まで秘密にされていた。李は習近平の最側近だけに、李が大会に姿を現すと、中国全土から集まった220人の地方幹部の参加者からの「オオオオーーッ」というどよめきが会場全体を包んだほどだ。