フランス革命といえば、18世紀に起きた市民革命として知られている。そのときの革命歌『ラ・マルセイエーズ』はフランス国歌として今も歌われている。その革命の歌が、フランス大統領選挙で敗れた右翼のマリーヌ・ルペン候補支持者たちが、たびたび合唱されていた。右翼が革命歌をなぜ好んで歌うのか、評論家の呉智英氏が、フランス革命が掲げた三目標の本当の意味とともに解説する。
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フランス大統領選挙は、中道左派のマクロン候補が右翼のルペン候補を破って勝利した。フランスは一応の政治的安定を見せた。
ところで、今回の選挙を前にした我が国の報道を見ると、ルペンへの警戒心とともに一種のとまどいが感じられた。
朝日新聞は四月二十五日付「天声人語」をこう始める。「フランス国歌『ラ・マルセイエーズ』は歌詞のむごたらしさで知られる。フランス革命の際、外国と戦う兵士を鼓舞するため書かれた。敵が〈息子を、妻を、殺しに来る〉〈武器を取れ、市民諸君〉〈不浄なる血が我らの田畑に吸われんことを〉」「パリで先週、右翼・国民戦線の集会をのぞいた時も何度も合唱されていた」
フランス革命の時の革命歌を国歌にしていながら、なぜルペンと国民戦線はその革命歌を誇らかに歌うのか。この歌には「むごたらしい」歌詞があり、そこが右翼に好まれるのか。そう言いたげだ。