ピアノの天才で、八分の一がユダヤの血をひくマックスら、個性的な仲間たちとともに、彼らならではのしたたかなやり方で時勢に逆らっていく。またユーゲントの一員で、不良集団のスパイをさせられていたクーは、貧しい家の息子だ。〈ユーゲント抜ける、ってのは、人生投げる、って話だ〉と、苦悩するが、エディの仲間に加わる。しかし、彼らは身近な人の死と、ハンブルクへの爆撃を目の当たりにすることになる。
兵役につかざるを得ない貧困層の青年、強制所収容者を民間企業で強制労働させていたことなど、知られざる史実も浮かび上がる。物語全体に重層的な音色が響く。
※週刊ポスト2017年5月26日号