時に“んんんん~~!!”と唸うなりながらしゃくりあげて癇癪を起こし、時に鉄格子の隙間に顔を挟みながら妻を“ガン見”して尾行する。日本中を戦慄させた、あの「冬彦さん」から25年――放送中のドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)で見せる東出昌大(29才)の狂気っぷりに注目すると、そこに“今”の夫婦のカタチがみえてきた――。
佐野史郎(62才)演じる冬彦さんが大暴れした『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)は、1992年に放送。冬彦と結婚した妻が、彼の常軌を逸したマザコンぶりや姑の過干渉に耐え切れなくなり、かつての恋人とヨリを戻すというストーリーだった。
対する『あなそれ』は、“2番目に好きな人”と結婚した妻・美都(波瑠・25才)が“いちばん好きな”初恋の人と偶然再会。一線を越えてW不倫にハマッてしまい、妻の浮気を知った東出演じる夫・涼太は猜疑心や嫉妬からヤバい夫へ豹変していく。
妻が寝言で知らない男の名前をつぶやいたことで、疑いのスイッチがオン。深夜の寝室では妻の枕元にひざまずき、まばたきひとつせずに両眼を見開いてスマホをチェック。離れている日中は執拗に連絡し、自宅で顔を合わせれば、「ねぇ、ぼくと結婚してよかった?」と妻の浮気を知りながらも、そんなそぶりはつゆほども見せず、イエスをじりじり迫る…。
杏(31才)と結婚し、双子のパパで、来年には3人目の子供が生まれる東出。酒好きな彼は友人も多く、夫婦を慕って夜な夜な人が集まり、杏が手料理でもてなすという。そんな絵に描いたような幸せを地で行く彼が、よもやこんな役を好演しようとは誰も思っていなかったはず。実際そのギャップもあってか、毎週の放送終了後には、必ず涼太がニュースになっている。
奇くしくもゲス不倫が大流行中のなか、美都の浮気相手が「御出産祝」と書かれた祝儀袋から食事代を払う姿や、美都が悪びれる様子もなく不倫に“運命”を感じてうっとり酔いしれる脳天気な姿に「あぁ、むかむかする!」「どっちもクズすぎる」という声が続々上がるのだが、涼太の注目度はそれ以上!
このドラマにハマッているという『女子会2.0』(NHK出版)の著者でライターの西森路代さんは、その理由をこう分析する。
「冬彦さんは、“マザコン夫”という意味では時代を映していたけれど、かなりデフォルメされたキャラクターでした。でも東出さんの涼太は、『こんなヤバい夫、いないって』ではなく、『いるかもね』と、視聴者に感じさせ、『私の夫も突き詰めたらこうかも』とイメージさせるのでは」(西森さん)