かつては妻好きと公言する男性は「ヘタレ」とみなされる世の風潮もあった。そもそも「愛夫家」という言葉がないのに「愛妻家」という言葉があること自体、夫婦間のパワーバランスがゆがんでいた証。だが今では夫の心情も変化してきたと指摘するのは、『〈喧嘩とセックス〉夫婦のお作法』(イースト・プレス社)が最新刊にある育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんだ。
「男性が好き放題するのが甲斐性や美徳とされたのは、専業主婦率が高かった時代。1990年代以降は女性の4大卒率もグッと上がり、今や共働きが当たり前ですから、女性はいざとなったら自立できる。経済力を理由に離婚を我慢しなくてもいい時代なんです。妻と夫は対等に、そしてお互いをリスペクトしないと夫婦関係が壊れてしまうという緊張感が、夫にも高まっているのでしょう」(おおたさん)
だからこそ、恥ずかしいとされていた妻自慢も捉え方が変わってきた。インスタグラムやフェイスブックといったSNSでも“妻好き”な投稿がよくみられる。
「妻に対して誠実な人が増えたのは、男が夫の立ち位置にあぐらをかかなくなったから。それに今は、不倫がめちゃめちゃ叩かれるご時世。妻を愛していると言いやすい空気になってきたんだと思います」(おおたさん)
『女子会2.0』の著書があるライターの西森路代さんは、「妻好き」を胸張って言えるようになってきたのは、結婚の価値が変わったことと無関係ではないと言う。
「『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私はあなたと結婚したいのです』というゼクシィのCMが象徴的。結婚しなくたって幸せにもなれるし、男性の生涯未婚率が4分の1になった時代に結婚をすることは貴重。希少だから、妻自慢もしたくなる。その延長で妻自慢にも抵抗がなくなってきているのでは。妻に文句を言いにくいのも同じで、結婚が当たり前じゃないから相手を尊重する」(西森さん)
昨夏結婚した芸人の小島よしお(36才)は、就寝時間を合わせるなどの夫婦仲の良さをSNSに投稿。
「自分は『おれでもこんなかわいい子と結婚できたよ』というのをモテないと悩む世の男性に伝えたくて(笑い)。おれも全然モテなかったんで」
そう言って、はにかむ小島は、世間で妻好きアピールをする人が増えたことについて、こんな持論を展開した。