〈ぜひ見ててくださいよ。この会社のこれからの成長はローソンの比じゃないですよ〉
コンビニエンスストア大手、ローソンの会長職を退任する意向を示していた玉塚元一氏(54)が、ソフトウエア不具合検査企業のハーツユナイテッドグループ社長に就任(6月末の株主総会後)することを発表。5月15日に開いた会見でこう強い自信をのぞかせたという。
玉塚氏といえば、旭硝子や日本IBMを経た後、1998年にカジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのカリスマ創業者、柳井正氏(現会長兼社長)に見込まれて転職。わずか4年後の2002年に40歳という若さで社長に就任したことで、一躍スター経営者に。
2010年には当時ローソン社長だった新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)に再三請われ、鳴り物入りでローソンへ。2014年より社長を務めたことで、企業を渡り歩き経営を請け負う「プロ経営者」の呼び名も加わった。
そして今度は自分よりも10歳若いハーツ社の創業者、宮沢栄一氏(44)の要請に応じることになった玉塚氏。一体なぜ、ここまでモテるのか。「一言でいえば“いい人”なんです」と話すのは、経済ジャーナリストの松崎隆司氏だ。
「証券業界の財閥、玉塚証券の御曹司である元一氏は、根っからのお坊ちゃん育ちで人あたりがいい。また、幼稚舎から大学まで慶応に通い、大学時代はラグビーに打ち込みながら仲間をまとめるチームワークを学んだといいます。
そうした人柄は経営者になっても変わることなく、細かい業務執行よりもむしろ従業員のモチベーションを高める体育会系のノリそのまま。マネジメント能力に長けた経営者といえます」(松崎氏)
体育会系と聞くと、強力なトップダウン、時にはリストラの一環で無情な“制裁”も辞さないイメージがあるが、どうやら玉塚氏は違うようだ。コンビニ業界の専門紙『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏がいう。
「ローソンでいえば、むしろドライなリストラができたのは新浪さんのほうで、玉塚さんは何とか人や事業を切らずに済む方策を考えるタイプでした。自ら現場に出向き、加盟店オーナーの悩みや不満なども親身に聞いていたようですしね」
社員一丸となった「チーム玉塚」のマネジメント術は、彼を迎え入れたオーナー経営者たちにとっても好都合だったようだ。