【著者に訊け】新保信長氏/『字が汚い!』/文藝春秋/1300円+税
「僕の字は汚いというか、コドモっぽいんですよね。自分も大人になれば大人っぽい字が書けると思ってきたのに、『全然話が違うじゃないか』って(笑い)」
話題作『字が汚い!』の著者・新保信長氏、52歳のなんとも等身大な執筆動機である。マンガ解説者・南信長としても活躍する氏は、字の巧拙が人格をも左右し、今も〈手書き信仰〉が根強いこの国の、字にまつわる各現場を旅することになる。
まわりの字のヘタな人やうまい人に話を聞き、作家や画家、政治家や野球選手等々、肉筆図鑑さながらに標本を採取。併せてペン字教室に通い、各種〈美文字〉ドリルにも挑戦した結果、彼はハタと気づく。自分は美文字ではなく、〈いい感じの字〉が書きたいのだと!
ちなみに「いい感じ」の「いい」を、新保氏は平板に発音し、あえて表記するなら「イイ感じ」に近い。
「それも、自分にとってのイイ感じの字、ですね。もちろん芳名帳とかに書くときは、いわゆる美文字のほうがいいんでしょうけど。もともとはみんな子供の頃に同じように字を覚えて、学校でも同じように書写や習字を習ってきたはずなのに、なぜこんなに結果がバラバラなのか不思議で。うまい人とヘタな人は何が違うのか、どこで道が分かれたんだろうかと」