小池都政に綻びが見え始めている。5月の連休明け、東京都が公費20億円をかけて豪華クルーザーの建造を進めていたことが発覚。海外からの賓客をもてなそうという舛添要一前知事時代からの案件だというが、「都民ファースト」を掲げる小池百合子知事がなぜこんな無駄遣いにストップをかけないのか、理解に苦しむ。また、同11日には都が神奈川、千葉など都外のオリンピック仮設会場の建設費を全額負担することも表明。当初は開催自治体との費用分担を目指していた小池知事だが、政府と首都圏3県の知事に全額負担を押し切られた形となった。なぜ、こうした混迷が続くのか? 5月15日に『東京都庁の深層』を上梓した現職都議の柳ヶ瀬裕文氏に、首都行政の問題点を聞いた。
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「東京大改革」を掲げる小池知事ですが、就任当初の知事が改革を前面に押し出すのは、何も今に始まったことではありません。鈴木俊一知事、石原慎太郎知事時代には行財政改革が実施され、舛添要一知事時代には2020年オリンピック開催費用の大幅な圧縮(小池知事による圧縮は400億円だったが、舛添氏のそれは2000億円に上った)が行われました。
なぜ、こうした傾向になるのかといえば、東京都知事選が「準国政選挙」と形容されるほど注目度が高い点が理由です。各政党が国政選挙並みの体制をもって選挙戦に臨み、メディアも大きく取り上げるから、必然的に都民だけでなく全国民の目が向く。よって、就任当初の都知事は自身の手腕を披露しようと「改革」に邁進するわけです。
一方、これまで都議会と都庁職員はその抵抗勢力となっていました。たとえば、石原氏による行財政改革の具体例として、「外郭団体」の整理統合が挙げられます。外郭団体とは都から出資を受けたり都の業務を担ったりする団体、企業のことですが、同時に都庁幹部職員の天下り先でもあります。この外郭団体の整理を担当していた石原氏の腹心、浜渦武生氏は副知事の座を追われました。都議会百条委での浜渦氏の発言が「偽証」と判定されての追放劇でした。石原氏を後ろ盾に副知事という強大な権力を手に入れた同氏を快く思っていなかった有力都議と、自分たちの天下り先となる外郭団体を潰されることに危機感を抱いた都庁職員の思惑が合致した結果に終わったともいえます。
浜渦氏は今年に入り、市場移転に関する百条委に証人喚問され、そこでの発言が再び「偽証」と認定される見通しです。6月には刑事告発される可能性もあります。私は必ずしも浜渦氏を支持しているわけではありませんが、これは異常な事態です。こうした傾向もまた、都政に混乱が続く一因だと考えます。
問題点はまだまだあります。都庁幹部の天下りです。2016年に退職した都庁幹部は224人いました。そのうち、再任用によって都庁で働き続けることになった66人を除くと158人となります。この3割超に当たる58人が外郭団体に再就職しています。