《1万円札3枚を3万5500円で売ります》。5月初旬、個人の間で商品売買ができるフリーマーケットアプリ「メルカリ」で、こんな商品が登場して話題となった。余計なお金を出してまで、なぜ“現金”を買おうとするのか? というもっともな疑問がわくが、買い手は確かにいた。手元にも銀行口座にもお金がないが、当座を凌ぐ現金がどうしても必要、という人間が購入していたようなのだ。かつて、サラ金の取り立てに困った人が、高利と知りながら、別のサラ金から借金したのと似た構図がそこにあったのだ。
運営会社が現行貨幣の出品を禁止すると、今度は現金がチャージされたSuicaや「現金キャッシュバック」と書かれた絵馬、さらには1万円札を魚のような形に折った「オブジェ」や、1万円札を「福沢諭吉のポートレート」と題する商品まで登場した。
怪しい商品は現金関連だけではなく、3月には“女性が妊娠しやすくなる”と謳う「妊娠菌」が付着したとされる品物も数多く出品された。医薬品医療機器等法(旧薬事法)に抵触する恐れもあることから、運営は妊娠菌関連の商品を削除している。
メルカリの出品物には物議を醸すものが少なくない。その代表が、「使用済みのストッキング・下着」「女子中学生や女子高生のセーラー服・体操着」などだ。フリマアプリに詳しいライターの鈴木梢さんが語る。
「あの手この手でさまざまな物を売ろうとする人はいるし、例えば使用済みストッキングを“掃除用”と銘打ってセーフにするなど、グレーな出品物もあります。ただし運営会社の多くの人がユーザーサポートを担当し、問題のある商品が出品されていないかをチェックしているので、あとは利用者のモラルさえあればみんなで楽しく使えるはずです」
その一方、ITジャーナリストの三上洋さんはメルカリには大きな問題が残ると指摘する。
「最大の問題は、出品者の本人確認がないこと。登録時に身分証明書が必要ないので、偽名でも出品可能。匿名で取引できるため悪徳業者が参入し、現金やブルセラなど怪しい商売に利用される余地を作りました」
メルカリ最大の魅力はスマホだけで瞬時に売買できる手軽さだが、東洋大学総合情報学部教授の藤本貴之さんは、そこに落とし穴があると警鐘を鳴らす。