ジャズミュージシャンの成長を描いた漫画『BLUE GIANT』がシリーズ累計230万部を突破、第62回小学館漫画賞を受賞するなど注目を集めている。それにしても、なぜ数ある音楽の中でもマイナーと位置づけられているジャズをあえてテーマに選んだのか。前作『岳』で山岳漫画に風穴をあけた作者の石塚真一(45)は、こう明かす。
「日本のジャズには、どうしても少しハイソでフォーマルというイメージがある。でも、そうじゃなくて、Tシャツとジーンズで聴きに行って、プレーヤーたちの喧嘩のような激しいバトルを見る楽しみもあるわけです。
内なるものをさらけ出し、勝負するのはジャズが一番だと思う。とにかく〝わあ、ジャズってどんな音楽よりも格好いいな〟と感じてもらえるような漫画が描けたらと思って始めたんです」
『BLUE GIANT』の連載が『ビッグコミック』誌で始まったのは、2013年のこと。現在はコミック全10巻を刊行し終わり、続編の『BLUE GIANT SUPREME』が連載中だ。
「まじめにフラフラしていた」と本人が振り返るように、石塚の漫画家としてのスタートは、30歳直前と極めて遅い。高校を卒業した石塚は、南イリノイ大学新潟校に進学した。その後、アメリカ本校に渡るが、山に魅せられカリフォルニアの大学に転籍。気象学を専攻し始める。