日本ハムの近藤健介の打率は5月17日終了時点で4割3分1厘。史上初の「4割バッター」の誕生なるか──名選手たちに話を聞きながら、そのカギを探った。
1980年、ヤクルトの若松勉とともに4割に迫る勢いで熾烈な首位打者争いを演じ、2度目のタイトルを獲得した谷沢健一氏(打率3割6分9厘)が語る。
「梅雨の乗り切り方が大事だと思います。バットに湿り気が出るから交換に気を配るし、体調管理も大変。私もアキレス腱の故障から復起したシーズンだったので特に梅雨がきつかった。反対にピッチャーがへばってくるのが夏場です。夏に固め打ちをして稼がないと打率は上がってきませんよ。あの年は私が上げたのではなく3割8分~3割9分で突っ走っていた若松が夏に故障して打率が落ちてきたから私が逆転できたんです」
日本ハムの本拠地・札幌に梅雨はなく、球場もドーム(屋内)だ。これは大きな追い風か。
ただし、これから近藤が好打率を維持するようであれば、メディアの注目が集まるようになり、プレッシャーにつながる。元阪神打撃コーチ・竹之内雅史氏は、かつてランディ・バースが4割に限りなく近づけた(1986年に3割8分9厘=日本歴代最高記録)背景に、「打率単体ではそれほど注目されていなかった」ことを挙げる。
「3割5分0厘打った1985年は、王貞治さんの本塁打55本を抜くかどうかばかり注目されていたし、歴代最高打率を記録した1986年は2年連続三冠王を達成できるかで騒がれていたと記憶している」
ホームランバッターではない近藤は、バース以上の注目のなかでの“バース超え”を狙う必要があるのだ。