波乱続きの大相撲5月場所。両国国技館は連日、沸きに沸いている。手負いの横綱・稀勢の里を見つめながら、ある日本相撲協会関係者は、「かつての第62代横綱・大乃国(現・芝田山親方)を思い出してしまう」とため息をついた。
本誌・週刊ポストが角界浄化キャンペーンを展開し始めた1980年代後半は八百長全盛期だったが、大乃国は数少ないガチンコ力士として知られた。稀勢の里もガチンコ力士である。
1987年9月場所後に横綱昇進したが、前2場所は準優勝。3場所合計40勝という理由で推挙されていた。
「関係者のなかには“ガチンコの大乃国が土俵を変えてくれるのでは”と期待する声が多かった」(同前)
だが、翌11月場所にガチンコ横綱を待っていたのは過酷なまでの「包囲網」だった。
「八百長が蔓延っていた時代ですから、序盤から三役、平幕力士たちが大乃国を潰そうと目の色を変えて向かってきた。序盤に3連敗するなど、終わってみれば8勝7敗。新横綱として史上最低の成績になってしまった」(ベテラン記者)