今年2月、世界的に権威あるイギリスの医学誌『ランセット』に衝撃的な論文が掲載された。
英公立研究大学「インペリアル・カレッジ・ロンドン」と「WHO(世界保健機関)」が世界35か国の寿命などを調査・分析。その結果、2030年に韓国が「世界一の長寿国」になると予測したのだ。男性は84.07歳で、女性は90.82歳だ。
一方、「長寿大国」としてランキングトップに長く君臨してきた日本は女性(88.41歳)が韓国、フランスに追い抜かれ3位。男性(82.75歳)は現在の5位から11位に転落すると予想されている。
千葉大学予防医学センター教授の近藤克則氏は、日本の平均寿命の延びを鈍化させる要因として「健康格差」を挙げる。
「今のままでは貧困層や未婚者が増えると予想されます。とくに子供の相対的貧困率はOECD(経済協力開発機構)加盟35か国中で10番目に高い。子供の貧困問題の影響は50年後の高齢期にまで及ぶという研究結果もあり、日本は将来的な健康格差拡大のリスクを孕んでいます。
低所得者ほど病気になる確率は上昇し、それは死亡率にも表われています。かつて65歳以上で要介護認定を受けていない人を4年間追跡調査したところ、その間に死亡した男性は高所得者(年間所得が300万円以上)が11.2%だったのに対し、低所得者(同150万円以下)が34.6%でした。実に3倍もの開きがあったのです」