主治医の年齢が60歳以上になると患者の死亡率が急上昇する──米ハーバード公衆衛生大学院の研究者で内科医の津川友介氏らが、英国の医学雑誌の権威『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』(5月16日付)に発表した論文の要旨である。
津川氏らは、2011~2014年に内科系の疾患で米国の病院に入院した65歳以上の患者約73万人の主治医1万8854人について、年齢や性別、どの大学を何年に卒業したか、どんな医学研修を受けてきたか、といった経歴が、患者の「30日死亡率」(入院してから30日以内に死亡する割合)にどう影響するのかを検証した。
その結果、「年齢」に関して驚きのデータが出た。40歳以下の若手医師が担当したケースの30日死亡率が10.8%だったのに対し、40代だと11.1%、50代なら11.3%となった。さらに60歳以上になると12.1%と、主治医が高齢になるにつれて死亡率は上がっていったのである。
人口全体の高齢化に伴い、日本では医師の高齢化も着実に進んでいる。厚労省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、60歳以上の医師の人数は、2004年で5万1870人(医師全体の20.3%)だったが、2014年には6万9857人(同23.5%)まで増加。今では日本の医師の4人に1人が60歳以上。70歳以上の医師は2万6725人で全体の9.0%にあたる。ベッド数が19床以下の診療所(町医者)になると、60歳以上の割合は44.5%にまで跳ね上がる。米国の医療事情に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。