「雨が降ると頭痛がする」「台風が近づくと腰痛や肩こりがひどくなる」──天気によって持病の痛みが増した経験を持つ人はいるだろうが、「気のせい」と片付けていないだろうか。
天気は人体にさまざまな影響を及ぼしており、それは時に命の危険すら伴うこともある。気圧医学の第一人者で、『天気痛』(光文社刊)の著書もある愛知医科大学客員教授の佐藤純氏は、20年以上にわたって「天気と痛みの関係」を研究してきた。佐藤氏がこう語る。
「天気の悪化による不調を『天気痛』と名付け、2015年に出演した生活情報番組『ためしてガッテン』(現『ガッテン!』、NHK)で初めて言及しました。当初は“信じる人がいるのか?”と不安でしたが、番組終了後に“長年の痛みの謎が解けた”、“これまで痛いといっても信じてもらえなかったのに、これで理解してもらえる”などのメッセージが続々と届いたのです。研究を続けてきて良かったと思いました」
佐藤氏によれば天気痛のメカニズムはこうだ。
「天気が悪くなる、つまり気圧が下がると人間はこの変化をストレスに感じます。それに対抗しようと自律神経内の交感神経の働きが活発になり、血圧や心拍数が上昇することで痛みの回路も活性化。痛みに敏感になり、慢性痛などが強く出てしまうのです。
天気痛を訴えるのは女性が圧倒的に多いのに、天気の変化を感じるのに男女差はないはず。男性は痛みを訴えたり、具合が悪いと言ったりしにくい風潮があるため、表に出てきてないだけでしょう。
2015年の愛知医科大学の調査によれば、現在国内だけで約1000万人以上が天気痛の症状を抱えていると推計されます」
痛む場所は、それぞれが抱える持病や慢性痛の部位による。代表的な天気痛は、片頭痛、肩こり、腰痛、関節痛などだが、うつや気持ちの落ち込み、イライラが強く出るなどの精神状態にも影響を及ぼすという。