「近年の刑事ドラマには、犯人の追跡劇だけではなく、推理や人間ドラマの要素も加わり、魅力がぐっと増している」
そう話すのは上智大学文学部(メディア文化論)の碓井広義教授。昔と今のドラマに甲乙はつけられないものの、大きな違いがあるという。
「昔の警察ドラマは勧善懲悪で、犯人は悪者でした。しかし最近は、そういう単純な構図ではなくて、犯人側にも人生があり、犯罪へと至る事情があります。一方刑事にも悩みや葛藤があって、追う側も追われる側にも、きちんとした人間ドラマがあるんです」(碓井教授)
高視聴率を記録しやすいとあって、各局、警察ドラマを制作するせいで、今クールは刑事が活躍するドラマが6本。
なかにはダブルヘッダーも見られる。『緊急取調室』と『CRISIS』に田中哲司(51才)が起用されているのだ。ともに主人公の上司という、似た役回り。
「非常に珍しいです。主役を立てながら、本人も存在感を放つ名脇役の1人ですから、警察ドラマに重宝されるのでしょう」(碓井教授)
日本全国どの地でも必ず私たちの生活を見守ってくれている警察。ドラマのおかげで身近な存在と感じられるようになった一方、ドラマを見れば見るほど気になってしまう。一体、どこまでリアルなの?
例えば元刑事がウソだと口を揃えるのは、「取調室では、かつ丼を食わない」──そんなドラマのウソ・ホントを、『「警察ドラマ」のトリビア ~ドラマを100倍楽しむために』の著書があり、警察監修多数の倉科孝靖さん、犯罪評論家で元千葉県警部の田野重徳さんに聞いた。
◆1度のミスで出世が断たれる?
『小さな巨人』では、異例のスピードで出世を重ね、警視庁史上最年少で警部に昇任した香坂(長谷川博己・40才)が、ある飲酒運転の取り調べでミスを犯し、芝署に左遷されてしまう。1度のミスがその後のキャリアに影響を与えるとの描写があったが、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で描かれた銀行員のように、警察も1度のミスで、出世が断たれてしまうのだろうか?
「1、2年くらい、けじめをつけるために左遷することはあります。その辞令を出した者も、処分をすれば体面を保てますから、また元の部署に戻れます。ただし、そのまま外されてどこに行ったのかわからなくなった人もいます」(田野さん)
◆公安はメモを取らない?
警視庁公安部が舞台の『CRISIS』。捜査官の稲見(小栗旬・34才)と田丸(西島秀俊・46才)は、聞き込みをしているときに手帳にメモをしていない。ちょっと不安になるが、実際も?
「公安に限らず、刑事もあまりメモを取りません。一般人などに話を聞きながらメモを取ると、相手を圧迫してしまうからです。覚えられないような場合は、手にした新聞や雑誌に走り書きする程度。私も現役時代、人前で手帳を広げることはありませんでした。刑事によっては、ズボンのポケットに小さなメモと短い鉛筆を入れて、ポケットの中で書いていました」(倉科さん)
◆聞き込み時の情報提供に謝礼は出す?