最近ご無沙汰でも無くなると聞いて急に名残惜しくなるのはラーメン屋だけでなく、お菓子でも同じ。とくに50代前後の人は、子ども時代に発売されて今も売られているロングセラー商品がいくつもある。大人力コラムニストの石原壮一郎氏は「同級生お菓子を食べて応援しよう」と語る。
* * *
「東日本で『カール』が買えなくなる!」というニュースは、日本列島に大きな衝撃を与えました。寂しいニュースではありますが、そう言えばしばらく食べていなかったし、存在を忘れていた節もあります。古いお店や鉄道の路線と同じで、ぜんぜんお客さんではなかったのに、なくなると聞くと急に惜しむのはちょっと身勝手と言えるでしょう。
大切なのは、ふだんからちゃんと買い続けること。「カール」の悲劇を繰り返さないために、子どものころからお世話になっているお菓子にあらためて着目しましょう。「カール」は1968(昭和43)年に生まれて、今年で49歳になります。1960年代は日本が少しずつ豊かになっていった時期。その頃に登場し、今も売れ続けているロングセラーのお菓子はたくさんあります。
同い年で長い付き合いになるお菓子が存在するのは、いわばおっさんの特権。それを食べながら、子どもの頃の情景を思い出したり、お菓子に「お互い、いろいろあったなあ」「ベテランにしか出せない味ってあるよな」と話しかけたりするのは、大人の愉しみに他なりません。1960年代生まれで今も元気なお菓子をピックアップしてみましょう。
60年には、ロッテが「クールミントガム」を発売。当時としては珍しい辛口のペパーミント味で「大人のガム」として話題を呼びました。同じロッテの「グリーンガム」は、3歳年上のお兄さんです。61年に明治から発売されたのが「マーブルチョコレート」。翌々年の63年には「鉄腕アトム」のシールがおまけに付いて、売れに売れまくりました。大人になった今、あえてあの容器を筆箱がわりに使ったりするのも、また粋ですね。
62年には、湖池屋が日本で初めて量産化に成功して、「ポテトチップスのり塩」を発売します。同年、明治からは「アーモンドチョコレート」が出ました。グリコは1962年にテスト販売した「プリッツ」を、翌63年におつまみ用から子ども向けに方向転換して「バタープリッツ」として発売。私も同じ1963年生まれとして、熱く応援したいと思います。いつか女性と「プリッツゲーム」に興ずる機会があることを信じつつ。