警察組織内の対立、男同士の嫉妬などが描かれ、数ある刑事ドラマの中でも、異彩を放つ日曜劇場『小さな巨人』(TBS系、毎週日曜21時~)。ドラマでは、「私の勘だ!」というセリフがたびたび登場するが、制作側はそれとは真逆で、計算し尽くされた演出と徹底取材により、面白さを追求していた。
「さまざまなドラマを手掛ける中で、警察関係者と出会い、“いつか警察内部の人間関係を詳しく描きたい”と思ったのが企画の出発点でした」
そう語るのはプロデューサーの伊與田(いよだ)英徳さんだ。7話までの平均視聴率は13%を超え、注目度は日増しに上昇中。その背景には徹底した取材がある。
「フィクションではあるけれど、警察関係者が見ても、“あるある”と共感してもらえるようなものにしたかった。現役の警察官や、彼らと接触する現場の報道記者たちにもヒアリングして演出に役立てています」
5月21日から放送が始まった「豊洲署編」では、「国が持てあましたゴミの埋め立て地を10億で取得」した早明学園が舞台。今、社会問題化している森友学園問題を彷彿とさせるが…。
「世の中で話題になっている問題として、きっかけのひとつになったのは否定できませんが、あくまで手掛けたいのは人間ドラマ。そこに絡んでくる人たちの対立や心の動きを、丁寧に描きたいと思っています」(伊與田英徳さん・以下「」内同)。
では、ドラマの面白さを支える11のこだわりを紹介しよう。
【1】ヤスケン演じる刑事にはモデルがいた!?
安田顕(43)演じる渡部は、身なりに気を使わず、風呂にも何日も入らずに事件解決に奔走する所轄の刑事だった。「これは所轄刑事への取材がベースになっています。私たちも仕事がたてこむと、お風呂に入らないことがありますから」
【2】『シン・ゴジラ』コンビ再び
警視庁捜査一課から所轄に左遷させられた刑事・香坂(長谷川博己・40)を陰で支える妻を演じるのは市川実日子(38)。長谷川と市川は、映画『シン・ゴジラ』で共に戦ったコンビだ。「『シン・ゴジラ』を見て、あの2人が夫婦だったら面白いと思い、キャスティングしました」。
【3】所轄の警察署は細部までリアルを追求
所轄の警察署へは、実際にスタッフが行って取材。署内の部屋の雰囲気や署長室の小物などはできるだけリアルを追求した。「証拠を捜すため、香坂たちが警務係に署長室の鍵を借りる5話のシーンでは、鍵の管理方法はある所轄への取材をもとにしています」。
【4】香川照之の“顔芸”は本人発?
高卒ノンキャリアで、たたき上げの警視庁捜査一課長・小野田を演じる香川照之(51)。目を大きく見開いたり、歌舞伎の見得を切るようににらみつけるなど、その“顔芸”が話題。「演出と相談しながらあのような形になったと聞いています」。