森友学園問題のキーワードとして注目された「忖度」という言葉が、加計学園問題ではより具体的な言い方で登場した。
「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」
文部科学省の前川喜平・前事務次官が加計学園の獣医学部新設認可に絡んで総理補佐官から伝えられたと公表した発言だ。役人が他人(総理)の気持ちを推し量る、これが典型的な忖度だろう。「空気を読む」と言い換えればわかりやすい。
日本人の行動様式に関する鋭い思索で知られたコラムニスト、故・山本七平氏は1977年に刊行された著書『「空気」の研究』でこう書いている。
〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉
この妖怪は厄介だ。なにしろ、空気が読めなければ「KY(空気が読めない)」と呼ばれてコミュニティから排除されてしまう。けれども、ひとたび「空気」を味方につければ、どんなにスキャンダルが出ようとも、政治が不公平でも、政権は批判を浴びない。そればかりか、批判者の方が批判されるという不思議な現象が起きる。