これまでの価値観を覆すようなさまざまなお墓が登場している。今回は、東京都小平市にある都立小平霊園をノンフィクションライターの井上理津子氏が訪れた。
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小平霊園には、都立霊園初の樹木葬的な墓地が2012年にでき、話題になったことが記憶に新しい。初年度は、500体の募集に対して16倍の応募が殺到。以降も人気を集め続けているという。
最寄り駅は、新宿から西武新宿線で約30分の小平駅。意外に駅から近い。線路沿いに歩き、わずか6分で、小平霊園の正門に着いた。ケヤキ並木が続き、公園のような霊園だ。敷地面積は、東京ドーム約14個分にあたる約65万平方メートル。
公益財団法人東京都公園協会の霊園課長、戸室光司さんと、小平霊園管理事務所長の八馬稔さんが対応してくださった。
「『死後は安らかに自然に還りたい』というニーズにお応えする墓地です。もともと樹林地だった霊園内の一画に設けました。一般的に『樹木葬』と呼んでもらって結構ですが、正確には『樹林型合葬埋蔵施設』略して『樹林墓地』と、『樹木型合葬埋蔵施設』略して『樹木墓地』です」(戸室さん)
お役所用語はややこしい。両墓地は、正門から歩いて2、3分のところに並んでいた。すっきりしているなあ、というのが第一印象。50cmほどの高さの石垣の上に広がる、平らな芝生地だ。円形とも四角ともつかぬ形で、樹林墓地は約830平方メートル、樹木墓地は約650平方メートル。
樹林墓地には「武蔵野をイメージする」というコブシ、ヤマボウシなど5種類8本の樹木。樹木墓地には、カツラの木が3本立つ。これらがシンボルツリー。献花台と焼香台が用意された参拝所に立つと、一般墓地に林立する木々が背景だ。
今年も、7月から募集申込みが始まる。昨年度の「申込みのしおり」を見ても、仕組みが今ひとつわからないので、細かく説明を仰いだ。つまり、こうだ。
【樹林墓地】
・埋蔵予定数=約1万700体
・遺骨の形態=遺骨のまま、または粉状遺骨(パウダー化させる)を絹の袋に入れる
・埋蔵方法=樹木の下に、27のカロート(納骨スペース)が設置されている。それぞれのカロートに約400体の遺骨を入れる。カロートの下は土。土の上に遺骨袋を並べ、いっぱいになると土をかぶせ、その上にまた遺骨袋を並べる
・使用料=遺骨1体12万3000円。粉状遺骨1体4万1000円(2016年度)
【樹木墓地】
・埋蔵予定数=約2880体
・遺骨の形態=遺骨を絹の袋に入れる
・埋蔵方法=カロートはなく、樹木周辺の芝生をはがし、約30cm四方の穴を掘り、個別に1体ずつ土の中に埋蔵する
・使用料=18万3000円(2016年度)
昨年度は、1600体を募集した樹林墓地の倍率は10倍だった。だが、300体を募集した樹木墓地は1.7倍で、そのハードルは、意外とそう高くない。