貨物線を転用するという計画は、栃木県小山市でも検討されている。小山市には、小山駅から北東に約4.8キロメートルの貨物専用線が延びている。この貨物線は地元民や鉄道ファンから「高岳引込線(たかおかひきこみせん)」と呼ばれている路線で、現在は電気機械メーカーの東光高岳が変圧器を輸送するためだけに年10回ほど使用している。輸送されるのは、200トンを超える巨大な変圧器なので、自動車輸送に切り替えることもできない。そうした理由もあって、わずか年10回しか使われないのに今まで線路が残されてきた。
2015(平成27)年、小山市は今後のまちづくりを議論する検討委員会を立ち上げ、同線を有効活用するために旅客化の検討を始める。
「検討委員会では、まちづくりなども踏まえた小山市全体の交通体系について議論しました。高岳引込線については、需要や収支予測、建設費、運営費・事業スキームをはじめ停留所は約600メートル間隔で設置して全9か所、運賃は一乗車200円均一ということまで議論されました。わずか2年間という短い歳月だったこともあり、詳細な内容まで詰めることができていませんが、高岳引込線は軌道法で運行することは決まりました」と話すのは小山市都市整備部都市計画課の担当者。
小山市が鉄道として運営されている高岳引込線の線路を利用するにもかかわらず、軌道法で整備することに決めた理由は、軌道法が線路と道路の平面交差、線路で道路を横切ることを認めていることだった。
日本国内には数多くの鉄道が運行しているが、鉄道事業法か軌道法のどちらかに準拠して運行される。新幹線やJR、私鉄の多くは鉄道事業法に準拠されている。
一方、大阪市営地下鉄御堂筋線やモノレールなどの例外はあるものの、軌道法は一般的に路面電車に適用されてきた。そのため、小山市が軌道法を選択したことで「高岳貨物線に路面電車が走る」という報道も見られた。
あくまで、小山市は「旅客化するにあたり軌道法を適用する」という内容までしか決めていない。いまの時代に路面電車を始めるなら、完全電化された次世代型路面電車のLRTになると予想されるが、まだ決定はしていない。