未来のまちづくりにおける課題のひとつは、高齢化社会を迎えても暮らしやすい街にすることだ。その解決策のひとつとして、次世代型の路面電車導入を検討する自治体が全国で増え、ちょっとしたLRTブームともいえるほどだ。しかし、いざ実行にうつそうとなると、様々な問題が立ちはだかりなかなかすすまない。ライターの小川裕夫氏が、栃木県小山市のLRT計画を例に、LRT計画の実情をリポートする。
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CO2を排出しないから環境にやさしい・バリアフリー対応のため高齢者や障害者でも使いやすい・中心市街地活性化にも寄与するetc…。
路面電車の整備には、そんな大義名分が掲げられる。そうしたメリットがあるとわかっていても、路面電車をゼロから建設することは、かなり難しい。栃木県宇都宮市が2019年に開業予定にしているLRT(Light Rail Transit)計画も、その道のりは決して順調とは言えなかった。
宮城県仙台市や愛知県名古屋市のように路面電車を運行していた歴史を持つ自治体ならば、まだ市民からの理解を得られやすかったかもしれない。宇都宮市は路面電車を運行していた実績がないだけに、市民の理解を得られるかも未知数。そういう意味で、宇都宮LRTは、前人未到への挑戦でもあった。
宇都宮のようにゼロから路面電車を計画する自治体がある一方で、JR西日本の富山港線の線路を転用した富山ライトレールのように既存の施設を活用・転用することを検討する自治体もある。そのひとつが、東京都葛飾区だ。
今年2月、葛飾区は2017(平成29)年度予算にLRTの調査費用を盛り込むことを発表した。葛飾区が着目したのは、金町駅-小岩駅を走る貨物専用線。同線は新金線と通称されている路線で、貨物列車が1日に2、3本運行されている。葛飾区は貨物列車が運行していない時間帯に路面電車を走らせることで、線路の有効活用を図ろうとした。